漫画原作者 猪原賽BLOG

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『漫画原作のゲンバ』――「スターダッシュ★アルマクロー」(その2)

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『漫画原作のゲンバ』――「スターダッシュ★アルマクロー」(その1) - 賽の目記ポータル『漫画原作のゲンバ』――「スターダッシュ★アルマクロー」(その1) - 賽の目記ポータル

以下、作品すべてにおいてシナリオ・猪原賽ネーム作例カットおよび作画予定・横島一...

******(前回より)******

■10、11
  振り向く有馬本体。
  思わせぶりな表情を見せ、

  ――サッ サササッ
  と腰を抜かした小下から逃亡する。
小 下「な な な……」

  と困惑する小下の顔アップに、
  ――ドドドドドド……
  と後方から何やら音が。

  爆走するバイクのタイヤ。
  ――ド ド ド

  ――バウン
  背後を振り返った小下の上空に、
  バウンドしたプレアデスのバイクが一台飛んでいる。
メンバー「有馬ァ!!」
   「そこかァァァ!!」

  見上げる小下の顔。バイクの影が差す。
モノローグ「公園の ど真ん中に……」

  小下をはねるバイク。
  ――ガッ
モノローグ「――バイク?」

  プレアデスのメンバーが絶句している。
メンバー「あれ?」


  ベタゴマ。
メンバー「(オフ)あー ダメっすわコレ」
   「(オフ)心臓と肺が ぶっ潰れてる」
モノローグ「え?」

■12、13
  仰向けに倒れている小下目線。
  メンバーが座ってこちらを覗き込んでいる。
  ボスは立ったまま見下ろしている。
  木々。
  空。
  星。
メンバー「ヤッバい事になっちまったスね」
ボ ス「――これは 事故だ」
モノローグ「だから 助けてよ」

  同じ構図。
ボ ス「今日のところは 撤収する」
メンバー「え! 有馬の野郎 服 脱ぎ捨てるんスよ」
   「きっと近場に……」
モノローグ「撤収?」

  同じ構図。
  ボスがいなくなっており、メンバーが追って離れて行く。
ボ ス「誰かに見つかるほうが 面倒だ」
   「行くぞ」
メンバー「お 押忍!」
モノローグ「面倒って何だよ」

  同じ構図。
  しかしもう誰もいない。
  星空に向かって伸びる木々だけだ。
  ――ドルン ドルン
  とエンジンのかかる音だけする。
モノローグ「救急車ぐらい 呼んでくれよ」

  同じ構図。だんだん暗くなっていく。
  ――ドドドド……
  とバイクが去って行く音がする。
モノローグ「こんな死に方」
   「物騒もいいとこだろ」

  同じ構図。
  ――スッ
  と何者かが覗き込む。それは有馬の死体から出て来た変な生き物である。
  しかし、前のコマより更に暗くなる画面。
モノローグ「誰でもいいから……」
  ※ここまでのコマは同じ面積、4段構成、まったく同じ構図のイメージだが、背景はだんだん魚眼っぽくゆがんで闇に沈んで行く流れでも

  ベタゴマ。
小 下「(オフ)…助けてよ……」

  仰向けに倒れて、目を閉じた小下の顔。口からやばいほどの血。
  そのすぐ横に、何者かの影。
誰かの声「……おい」

■14、15
  白いコマ。
誰かの声「おい 起きろよ」
   「朝だぞ」

  ――ハッ
  と目を覚ます小下。

  ――ガバッ
  と起きると、そこは自室の布団だ。

  小下は戸惑う。
小 下「え?」

  望遠鏡がある。

  ――ガラッ
  と窓を開けると、

  自宅の駐車場に、バイクが置いてある。

小 下「バイクもある……」

  ――へたッ
  と座り込む小下。
小 下「――夢かぁ」
  心底ホっとする。

  洗面台で歯磨きをする小下。
  無造作に胸をボリボリとかく。
小 下「一体 何つー夢だよ」
   「自分が死ぬなんてさー」

  その胸をかく手は、Tシャツの下へ。

  ――ガリッ
  と指を噛む何か。
小 下「痛ッ」

  指を見る。血が付いてる。
小 下「え?」

  Tシャツの下から声がする。
何 か「ペッペッ」
   「不味ッ」

  小下は自分の胸辺りに目を落とし、戸惑う。

  おそるおそるTシャツの裾をつかみ、

  自分の胸を鏡に写す、小下の背。
小 下「な」

■16
  鏡に写った、小下の全身。
  胸に変な人面瘡が。
  有馬である。
有 馬「おい まともな朝メシ食わせろよ」
   「指じゃなくて ソーセージとか よ」

  小下、蒼白。

■17
  あっつあつのアイロンのアップ。
有 馬「(オフ)や」

  小下の自室。
  アイロンを自分の胸に押し付けようとしている小下。パニック。恐怖。熱い。
有 馬「やめろ! お前も熱いぞ!」
   「ヘタ打つと死ぬんだぞ!」
小 下「だ 黙れぇぇ 化物ォォォ……!!」

有 馬「化物じゃねェ!」
   「き 昨日見ただろ!?」

  ハッとする小下。
  その脳裏に浮かぶ、有馬の死体から抜け出た変な生物。
  (その面影が、胸の人面瘡にはある。)

  小下はぐいっとアイロンをつく。
小 下「やっぱ化物じゃないか!」
有 馬「あ 熱ッ 熱ッ!!」

  しかしそれは小下もだ。
小 下「熱っちぃ!!」
  アイロン投げる。
有 馬「ほら見ろ」

  胸に包帯をぐるぐる巻きにする小下。
有 馬「く 苦し…… モガフガ」
  と反応するが、小下の目は若干瞳孔が開いている。
小 下「妄想だ 妄想だ 妄想だ……」

■18、19
  登校する小下。制服。
有 馬「(おい ちょっと 話を聞け!)」
小 下「(夢だ 幻だ)」

  教室で一人外を見る小下。
有 馬「(現実を見ろ! この野郎!)」
小 下「妄想だ 妄想だ 妄想だ……」

  隣の席のクラスメイトが声をかける。
  女子だ。今後ヒロインになる、天文部の女子部員。名前は織部。
織 部「どうしたの? 小下くん」

小 下「あ 織部さん」
   「いや 何でも ハハハ」

小 下「単に 昨日 星を見に行ってね」
   「キレイだったなーって」
織 部「昨夜は 天気良かったからね」
   「あたしも 眺めてたよ」
   「ベガとアルタイル――織姫と彦星」

織 部「その実際の距離は約15光年……」
   「光ですら15年かかる距離を 一年に一回 七夕の時だけ思いだけが伝わるって ちょっと ロマンチックだよね」

  小下はふっと笑顔になる。ロマンチックだ。織部さんかわいい。

  そんないい雰囲気に水を差す笑い声。
有 馬「ぶわははははははは!!」
  大笑いが、小下の胸から聞こえる。
小 下「!!」
織 部「?」

有 馬「ベガもアルタイルも もうとっくに消滅

えてるぜ!」
   「しかもロマンチック?」
   「お互いいがみ合った末の 星間戦争で 一瞬でパーン! だぞ!」
  ぶわははは。
小 下「え ちょっと……」

織 部「小下くん……?」
  と心配そう、かつ涙目。
小 下「あ お 織部さん これは その……」

  ――ダッ
  と教室から逃亡する小下。

  屋上。
小 下「(オフ)どういうことだよ!?」

  胸をはだけて、有馬の顔が出ている。
小 下「何言い出すんだ お前ェェ!!」
  それを糾弾している小下だが、
有 馬「やっと まともに俺と会話する気になったか」

小 下「か 勝手に話すんじゃねーよ 化物!」
有 馬「化物じゃねぇ 俺は……」

 

 

漫画原作のゲンバ (上)

漫画原作のゲンバ (上)

 
漫画原作のゲンバ (下)

漫画原作のゲンバ (下)

 

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