漫画原作者 猪原賽BLOG

「学園ノイズ」「悪徒」「放課後カタストロフィ」の原作者/ブロガーが告知したり漫画の作り方、関連ニュースをお伝えします

オオシマ フランス便り『ツール・ド・外道』第08道

f:id:iharadaisuke:20131104101925g:plain

バンドデシネ生原稿の売買について」

どんも。しばらくぶりです。

いそがしいとその合間にコレ書く、みたいな感じなんだけど、返事待ちばっかりなので息をひそめてなんにもせず、なにもしないもんだからコレも手につかず状態でした(笑。
こちらはもう冬時間に入りました。夏時間中は時差7時間だけど、冬時間だと時差8時間。
こっちに来てずいぶん経ちますが、なんかこの始業時間を30分はやめて終業時間を30分遅らすような野麦峠システムはイマイチなれないです(笑。

さて今回は猪原君から「原稿の売り買いってどうなってんの?」という質問をいただきまして。
今回はそれについてのお話でも。


こちらでは日本に無い文化として、作家さんの生原稿の売り買いが行われています。
もちろん売るか売らないかは作家さんの自由。
自分のかいたものだから、と大事にとっておく作家さんも多いです。
そもそもこっちには絶版という考え方が一般的でないようで、以前日本での絶版の話をしたら編集者の方々が「?」って顔をしていました。
自分の英語が通じてないのかと焦るくらいの「?」顔でした(笑。
絶版がほとんどないからこそ、一度印刷されてしまえば比較的気楽に原稿を手放す作家さんが多いようです。

売り方にはいろんなやり方があるんですが主なものは3通り。

1、画廊さんと契約して売る

作家さんが画廊に原画を預け、委託で販売してもらいます。

いろいろ契約の形はあるようですが、大体取り分は
作家:画廊で5:5らしいです。

パリにはBDの生原稿専門の画廊があったりします。
いろいろな作家さんの生原稿が見れて興味ある人はそれだけで楽しいと思いますよ。
原稿の状態は作家さんによりまちまちで鉛筆で終っているもの、
きっちりペン入れしてあるもの、
カラーまで塗ってあるものと様々です。
超がつくレベルの人気作家さんならスケッチやラクガキまで売っていたりします。
かつて私はとある画廊さんでメビウス先生の白黒の生原稿を見ましたが
一枚20万円!の値段がついていました。
お亡くなりになる以前でこれですから、今はもっと高騰してるのかもしれません。
知り合いの「超」がつく人気作家さんは、
「ある作品の原稿を1冊分画廊に預けたら、一家で一年遊べるだけのお金が入った」
なんて言ってましたのでかなりおいしい収入になるようです。

2、イベントなどで自分で売る

いままで何度か触れてきましたが、BD作家さん達はなんらかのイベントに合同サイン会で呼ばれます。

その際にクリアファイル等に自分の生原稿を入れてお客さんに直に売ったりします。
確実な事は言えませんが大体みんな1ページ150~200ユーロくらいの値段を付けているようです。
人によっては印象的なコマだけ切り抜いてそれを€40~くらいで売っていたりします。
もちろんそうそう飛ぶように売れるものではないですがこの手のイベントは食事、ホテル代、交通費は出るものの
基本ボランティアなので、いいお小遣いになるようです。

3、でかいイベントで売る

アングレーム漫画祭など、マンモスクラスのイベントがいくつかありそこでは生原稿の売り買いも行われています。

これはもうお祭りなので、いくつもそれ専門の店舗がイベント会場内に出来、正直よっぽど狙いでもつけていかないと日本人ではわけがわからないのではないかと(笑。
売りだけでなく買いも行われているそうで
「俺がついさっきファンにかいたサインがもう売り場にならんでた」
なんて話もある程。
さすがにやりすぎだ、という話もあり、モラル面での問題も出ているようです。

 

 
他にも町の知り合いのお店で売ってもらう等、細かいものをあげればいろいろありますが、主にはこんな感じ。
まあ漫画家をながく続けるとわかりますが、昔の原稿とっておくの結構手間なんですよね(笑。
紙とはいえ、数百枚、数千枚となると場所だけでかなりとられてしまいます。
それよりは
「大事に飾ってくれるような人に譲りたい」
って気持ちは当然あるだろうな、と。

じゃまた。

オオシマヒロユキ

ひそかに海外で活躍してたオオシマヒロユキのフランスのカラーコミックス(バンドデシネ)を紹介します - 賽の目記ポータルひそかに海外で活躍してたオオシマヒロユキのフランスのカラーコミックス(バンドデシネ)を紹介します - 賽の目記ポータル

元相方・オオシマヒロユキの在仏日記を当ブログのコーナーとして連載(?)するというのは、この直前の記事のとおり...