赤松健先生がブログを更新しました。
★「絶版マンガ図書館」から、キンドルへの登録が可能になりました - (株)Jコミの中の人
これは大事件なのですよ。
「絶版マンガ図書館」に作品を登録している作家さんには、絶版マンガ図書館内に「(作家)マイページ」が付与され、
絶版マンガ図書館に提供している作品のキンドル化(KDPでの電子書籍販売)を代行するサービスが実装されたのです。
KDP代行が実装された「絶版マンガ図書館」
そこでは、先生の掲載作品一つ一つについて、
- 「Jコミが提供するサービス(キンドル登録・ハートコミックス登録など)」を受けるかどうかを自由にコントロールできる。
- 現在の広告収益を見たり、振り込み時期を指定できる。
- 個人JコミFANディングを始めたりできる。
- 紙ではなく、電子で契約書を締結できる。
といった便利な機能が使えます。
これが絶版マンガ図書館・作家マイページの機能。
まだこの機能の全てが使えるわけではなく、とりあえず「キンドル代行」機能のみがサービス開始。
これがものすごく画期的な事だとおわかりいただけるでしょうか。
KDPへの登録は、個人ではタイヘン
作家さんで、個人的にKDPで電子書籍を発売している方は多いです。
実際私も「賽の目記ブックス」として、個人的に電子書籍の販売をしていますが、この登録や事務的なやりとりは大変なものでした。
ブログ正式稼働と「賽の目記ブックス」のお知らせ - 賽の目記ポータル
この「賽の目記ブックス」は、現在頓挫しています。
そもそもKDPの登録には、Amazonの本部があるアメリカとのやりとりが必要です。
「収入は日本にあり、所得税を日本で払っている」という証明をしないと、印税からアメリカでの所得税を源泉徴収されてしまう。それを回避するために私は、アメリカの税務局にFAXを送り、日本で所得税を払っている証明をし、その証明番号を取得し、証明番号をAmazonに登録する必要があった。(今うろ覚えのまま書いているので諸々正しい専門用語があると思いますが、ざっくり言うとこんな感じのやりとりが必要になります。)
そんな煩わしさを突破して、やっとKDPでの自著電子書籍の発売が可能になる。
しかしそこからはまた、電子書籍のデータを自分で作る、という必要があり……
「賽の目記ブックス」が頓挫しているのは、ここに理由があります。
電書を自分で編集するのに手間がかかる。
なので……
マイナビ版『漫画原作のゲンバ』『煩悩ドライヴ』発売に『悪徒-ACT-完全版』『伴天連XX』予約開始!猪原賽★春のキンドル祭り! - 賽の目記ポータル
結果、私の電子書籍は、マイナビの編集者と出会ったことにより、「賽の目記ブックス」という個人レーベルではなく、大手出版社「マイナビ」からの電子書籍という形に鞍替えしたという形に落ち着いています。
まあ、何をここで言いたいかというと、つまり自前で電子書籍(KDP)するのはものすごく面倒だよ? と。
「絶版マンガ図書館」KDP代行は超カンタン!
もう一度、今回絶版マンガ図書館に実装された「マイページ」を見てみましょう。
私の登録作品『学園ノイズ』の項目。
「印税率の設定」と「ストアの作品内容紹介文」を書くだけで、そのまま絶版マンガ図書館(Jコミ)がKDPでの電子出版化を代行。
売れた分の印税は、絶版マンガ図書館に作品を公開して得る広告収入と合わせて振り込まれるという、何の手間もない仕様。
超カンタン!
代行手数料は?
これも赤松健先生がブログにてこう書いています。
予告通り、作者印税30%、Jコミ手数料5%となっています。
手数料はさすがに持って行かれますが、たった5%です。
作者は、絶版マンガ図書館に登録された自分の作品に、
上記「印税率の設定」をし、「紹介文」を書くだけで、30%の印税を収入と出来ることになる。その楽チンな手間と、販売機会を広げられることを考えれば、これがどんなに良心的な手数料なのか、おわかりでしょう。
※1「印税率の設定」とあるが、実質「キンドル化しない」か、「キンドル化代行してもらう(作者30%:Jコミ5%)」の設定になっている。
※2 作者印税70%が可能なKDPセレクトはKDP独占配信が第一条件なので、絶版マンガ図書館で作品を公開している以上、使用不可能
絶版マンガ図書館で<無料>のものを<有料>キンドル化に意味はある?
ただ、ふと考えれば、あくまで広告収入に頼り完全に読者に無料で公開している「絶版マンガ図書館」。
そこで公開している作品を、Amazon Kindleで有料販売する事に意味はあるのか? という疑問も出るでしょう。
私は、Amazonに自分の作者名で、過去の作品が登録される事。これが有意義な事ではないかと考えます。
私のこのブログエントリーを読んでいる方は、それなりにマンガのことが好きで、私がこれまで何度も書いて来た「絶版マンガ図書館(Jコミ)」の事は、もうご承知の事と思われますが、それでも「絶版マンガ図書館」は、正直まだまだ認知度が低い。
(赤松先生、すいません……)
事実、私が最近出会った編集者や、来春大手出版社にマンガ部に配属希望を出している大学生に、私の過去の作品について語る際に「Jコミ(絶版マンガ図書館)に登録されていて……」と言ったところ、
「え、なんですかそれ。知りませんでした」
(ブラウザで絶版マンガ図書館を見せる)
「うわ、これすごいですね!」
なんてやりとりがあったことは、事実。
マンガで食ってる編集者や、マンガが大好きで編集者になろうとしている若者が、まだまだ「知らない」サービス。それが「絶版マンガ図書館」。
絶版マンガ図書館で作品が登録されていても、絶版マンガ図書館を知らない読者なら、タダで読んでくれる事が少ない。しかしそんな絶版マンガ図書館がKDP代行してくれ、Amazonに作品が登録されれば……
現在連載中の作家さんであれば、最新刊が出れば、Amazonにはその最新刊の関連書籍として、Kindle(Jコミ)版の絶版コミックが並ぶわけです。
また、Amazonで読者が作者の名前を検索すれば、Kindle(Jコミ)版の絶版コミックが一覧に表示されるわけです。
私はこれは、<無料>と<有料>の競合ではなく、販売機会の拡大と取ります。
そもそも無料公開の絶版マンガ図書館であっても、絶版だった作品が広告収入によって新たな収入源になって生きているわけですから、完全に作者収入無しの意味での<無料>ではありません。あくまで、読者がタダで読める、というだけの話。
【結論】自分のコミックスが絶版状態になっている作家は、全員「絶版マンガ図書館」に作品を登録するべき
絶版になり、今後収入源となるべくもなく、過去の名作として古本屋を巡り巡っているだけの自分の単行本。
読者に忘れ去られようとしている、愛すべき自分の作品。
それを新たに「絶版マンガ図書館」で無料公開することで、昔のファンはまた読んでくれるし、新しいファンがつく。
広告収入も入る。
Amazon Kindle電子書籍化も格安で代行してくれる。(その手間はほとんどかからない。)
「絶版マンガ図書館」に登録しない手はないと思うのですが、いかがでしょうか。
【余談1】でも見せたくない、という人もいる
実は「絶版マンガ図書館」は、作者本人が登録しないでも、読者が自炊データ等を「絶版マンガ図書館」に登録。後日作者の確認を取って無料公開する、という事を始めています。
川島よしお先生の『さくらんぼ論理』は、読者がアップロードし、作者の許諾を待っている状態ですが、これについて川島先生は「公開に際してはそのままの状態ではなく、描き直したい部分がある」とのことで、新たな修正を施している状況だそうです。
また、許諾をお願いしても「昔の作品で恥ずかしい・見せたくない」との理由で許諾が下りなかった作品もあるそうです。
絶版ゆえに、それは「昔の作品」。マンガ家なら、確かにそんなこだわりがあるのも致し方ありません。
そんな残念な結果もあるにはある、という事を認識しつつ、
もしお手元に絶版となった過去のマンガを自炊してお持ちの読者の方がいれば、どんどん「絶版マンガ図書館」にアップロードしてもらいたいなと思います!
【余談2】「学園ノイズ」のKDP化は?
私の「学園ノイズ」は、ちょっと相方のオオシマヒロユキがフランスにいてやりとりが面倒なんで(笑)、連絡取れたらKDP等の設定、しようと思います。