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漫画原作者 猪原賽BLOG

「学園ノイズ」「悪徒」「放課後カタストロフィ」の原作者/ブロガーが告知したり漫画の作り方、関連ニュースをお伝えします

漫画トークイベント「コミックスなんていらない!?『解体屋ゲン』電子出版へ向けて大打ち上げ会」レポ

マン語り! 業界 雑記

f:id:iharadaisuke:20160510132314j:plain漫画原作者の猪原賽(@iharadaisuke)です。もはや半月以上前のイベントですが、去る4月30日に阿佐ヶ谷ロフトAにて開催された、石井さだよし先生・星野茂樹先生作のマンガ『解体屋ゲン』トークイベントのレポートです。……記憶を頼りに、私自身が思ったことを書き連ねるので、レポじゃない可能性もありますがw

とにかく『解体屋ゲン』は10年以上連載が続く雑誌の看板マンガなのに、コミックスが1巻(+コンビニコミック2冊)しか出ていない謎のマンガ。その作者お二人による、今後増えるであろう「コミックスにならないマンガ」に、作者が一体何をできるのか――そんな、マンガ業界やマンガ家自身への提言ともいうべき内容でした。

『解体屋ゲン』トークイベントに行って来た

〈1〉 無料アプリでプレイバック!記念

実体としてのコミックスが出ていない『解体屋ゲン』は、これまで過去を振り返ることが出来ませんでした。それでも人気があり、連載誌である「週刊漫画TIMES」の表紙を飾ることも多い。
「週刊漫画TIMES」は、もともとコミックスを買わずに、雑誌で読めればいいという読者層に支えられ、出版社・編集部もそう考える空気があったと言います。
ですが『解体屋ゲン』は、さすがに連載14年。700回も間近という、隠れた土木大河ドラマと言っていい。
今回のトークイベントは、そんな『解体屋ゲン』をスマホアプリでプレイバック出来る「漫王アプリ」のリリース(第101話〜200話まで)に合わせて、久々にファンと交流し連載の思い出を語ろうじゃないか、というトークイベントでした。

f:id:iharadaisuke:20160520132851j:plain▲「漫王・解体屋ゲン」アプリは僕もインストールしています!

 『解体屋ゲン』の101話〜200話まで、期間限定で無料で読めるスマホアプリ「漫王・解体屋ゲン」については、下記サイトをご参考に!

manga-oh.com

トーク内容は、

・漫王アプリ開発秘話
・今振り返る作者お二方の思い出の“コマ”
・ゲン初代担当編集と当時を語る
・作中に登場する土木ロボ「タキジロウ」秘話
・今後のゲン“電子出版”について
・現在の電子出版を含めた漫画雑誌の事情について
・読者との質疑応答

など、豪華ゲストトークも盛り沢山でした。

私自身は私用があり、到着が遅れ、アプリに関する話はきちんと聞けなかったのですが、いきなり「作者も覚えていなかった」漫王シーズン2収録分の思い出のコマをスライドで発表する愉快なコーナーから拝見。
特に今回アプリに収録されている101話〜200話は、ざっくり言えば「ゲンと慶子の結婚」「第一子誕生」という2つのクライマックスエピソード分を収録したもの。名(迷)シーンが多いのです。

続く元担当編集者さんとのぶっちゃけトークは、ここにも書けない業界トークが飛び、私は触れないでおいたほうが良さそうですw

唯一触れても良さそうな話では、原作の星野茂樹先生が話した、コミックスが出ていない理由のひとつ。それは「タイミングを逸した」という点。

〈2〉 週刊というナマモノだからこそ…

『解体屋ゲン』は「週刊漫画TIMES」に連載されています。当然、週に1回掲載され、年に約50話発表される計算。
週刊はほぼナマモノに近く、その時代の流れ・事件を取り込み、タイムリーに物語は紡がれがちです。話題になった芸能ニュースや重大な社会事件をいち早く扱うマンガなど、「時事ネタ取り込み早いな!」なんてネットで話題になったりしますよね。

『解体屋ゲン』アプリで今読める101話〜200話の中でも、ちょっと懐かしい時事ネタを見ることが出来ます。

f:id:iharadaisuke:20160520140443j:plain▲1993年のゼネコン汚職事件以降、後を絶たない「談合問題・事件」

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▲2005年「橋梁工事官製談合事件」を想起させるシーン。日本道路公団は「高速道路公団」に、OBによる談合組織「かづら会」は「K会」とアレンジされている

f:id:iharadaisuke:20160520141616j:plain▲「構造計算書偽造問題」も2005年に発覚した事件。「兄歯設計事務所」……

もう11年も前かよ!!!! と、私も読んでて思いましたw
原作の星野さんは、こうした週刊ゆえの時事ネタが、人気があってもコミックスの続刊が続かなかった理由のひとつとしています。人気云々ではなく、世間とのタイムラグが出来て「タイミングを逸した」のだと。

f:id:iharadaisuke:20160520140423j:plain試験運用として登場した「超電圧衝撃工法」も、「放電破砕工法」という名で技術が確立。昨年にこんなニュースにもなっていました。

日立造船、グループのニチゾウテックに放電破砕事業を譲渡

放電破砕工法は、日立造船が1995年に開発した、高電圧を瞬間的に放電することで岩盤やコンクリートなどを破砕する技術。

放電破砕工法は、トンネル工事や橋梁補修工事など約100件の施工実績を有し、東日本大震災により海中に沈んだ防潮堤の破砕など、水中での施工実績も有している。

星野さんの緻密な取材による、時事、業界ネタ。それはナマモノとして人々の記憶から失われる一方、あくまでそれはガワであり、キャラクターの織りなすドラマこそがマンガの“芯”。それは普遍的なもので、『解体屋ゲン』は何年前のエピソードであっても、今読んでも面白いはず! と星野さんは自ら太鼓判を押します。

私も正直、「漫王アプリ・解体屋ゲン」2ndシーズン(101話〜200話)は、その全てを初めて読みました。……が、その時々のニュースを思い出しつつ、ゲンの身辺ドラマに夢中になりましたよ。だからこそ、

なんてつぶやいたりしたわけです。……で、続きはマダなの!?w

 〈3〉これまで13年分の『解体屋ゲン』はいずれ読めるようになるのか

 トークゲストだったアプリ「漫王」担当者・竹垣さんによれば、もちろん今後、無料の「漫王アプリ」として『解体屋ゲン』を順次無料でリリース。現在は「2ndシーズン」として101〜200話を公開しているが、同様に期間限定とし、ぜひ3rd 4th ……と、700話目前で進行している連載に追いつきたいと語っていました。
同様に、現在は期間が過ぎて読めなくなっている1〜100話に関しても、有料版アプリとして再リリースを検討しているそうです。(4話で100円という値段設定を検討中。コミックスで言えば1冊分が200〜250円換算となる)

また星野さんからは、個人的にKindle版のリリースを検討中との発表。

そうです、今回のイベントのタイトルは「コミックスなんていらない!?『解体屋ゲン』電子出版へ向けて大打ち上げ会」。

  • 期間限定の無料アプリ
  • 期限なしの有料アプリ
  • 作者自らKDPするKindle版

と、『解体屋ゲン』のこれまで13年間の軌跡を振り返る、3つの電子書籍のラインが予定されているのです。紙のコミックスが出ないとあっても、これからは電子で読者に届けることが出来るとぶち上げる。そんなイベントだったのです。

〈4〉その他のトピックス

その他イベントでは、ゲストによるトークと共に、石井先生、星野先生のぶっちゃけや補足が入る形で進行。
メカデザイナー・かこいかずひこさんによる『解体屋ゲン』への思い、作者のお二人との出会い、そして物語に登場する二足歩行型土木ロボ「タキジロウ」をデザインするに至った経緯に、星野さんが思わず漏らした「タキジロウ世界計画」。
また漫画感想ブログ「情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明」のsoorceさんによる、漫画雑誌・電子書籍業界の概況(現在週刊漫画誌はたった10誌しかない!)、またネットを介したファンとの質疑応答などもあり、見応え充分。

次は4年後、オリンピックイヤーに! と予告されていましたが、私はもっとこうしたイベントでお話うかがってみたいなと思いました。

イベントを拝見してこれは書いておかねば! というポイントは書けましたので、これ以上書くととりとめがなくなります。最後に、ここ最近で『解体屋ゲン』のとあるエピソードがネットで話題になり、作者自らネットで1話まるっと無料公開している事をお知らせして終わります。

togetter.com架空の女児向けアーケードゲーム『ワクワークガールズ』を扱ったスペシャル回、アイカツがアイカツスターズに入れ替わるタイミングになんぞこれwwwと話題になっておりました。初めて「萌え」を理解するゲンさん。読みましょう。

今回はこの辺で。漫画原作者の猪原賽(@iharadaisuke)でした。ではまた。

〈補〉今回言及した本、リンクなど

解体屋ゲン 1 (芳文社コミックス)

解体屋ゲン 1 (芳文社コミックス)

 
解体屋ゲン 2(ゲンさん大奮闘編 (芳文社マイパルコミックス)

解体屋ゲン 2(ゲンさん大奮闘編 (芳文社マイパルコミックス)

 
解体屋ゲン 危機一髪 爆破解体編 (芳文社コミックス)

解体屋ゲン 危機一髪 爆破解体編 (芳文社コミックス)

 

 ▲貴重な、たった3冊の『解体屋ゲン』コミックス

manga-oh.com▲無料アプリ『解体屋ゲン』(101〜200話)はこちらからどうぞ

d.hatena.ne.jp▲『解体屋ゲン』に注目しイベントでもゲスト登壇したsoorceさんのブログ