漫画原作者として活動し、漫画原作者が一体何を書いているのか……そんなお話をしている当ブログ「漫画原作者 猪原賽BLOG」。
そんな私でも、あの先生は一体どんな原作を書いているのか……と気になって仕方がない原作付きマンガがあります。ぜひあなたも、気になって眠れない夜を過ごして下さい!w
気になる“謎”の原作付きマンガ
1・『樹海少年ZOO1』(漫$画太郎/原作・ピエール瀧)
『樹海少年ZOO1』(じゅかいしょうねんずーいち)は原作:ピエール瀧、作画:漫$画太郎によって、秋田書店「週刊少年チャンピオン」にて2001年31号から2003年30号まで連載されたギャグ漫画である。(Wikipedia)
漫☆画太郎先生が、週刊少年チャンピオンで連載していたギャグ漫画。全9巻。
原作はピエール瀧*1。
画太郎先生のそれまでのマンガや、その後のマンガと、原作が付いているからと言って特に大きな違いはなく、完全に「画太郎先生のマンガ」になっている。
ピエール瀧が一体このマンガにおいて、どんな原作を書いたのか、はたまた何も書いてないのか。それはご本人お二人しかわからないが、コピペ多用で同じシーンを繰り返す天丼芸は、テクノバンド「電気グルーヴ」のメンバーミュージシャンのキャラが出たのか、「スクラッチ」にも似て、非常にクドい。
画太郎先生のマンガの「スクラッチ芸」にキレが出て来たのも、このマンガ以降のような気がして、それがピエール瀧の原作や助言によるものならば、ますますピエール瀧がどんな「マンガの原作」を書いていたのか、気になって仕方ないのだ。
2・『ナースエンジェルりりかSOS』(池野恋/原作・秋元康)

ナースエンジェル りりかSOS 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
- 作者: 池野恋,秋元康
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/11/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
『ナースエンジェルりりかSOS』(ナースエンジェルりりかエスオーエス)は少女漫画雑誌『りぼん』1995年1月号から1996年6月号まで連載されていた秋元康原作、池野恋作画の漫画。またそれを原作とした1995年7月7日から1996年3月29日までテレビ東京系列で放送していたテレビアニメ。(Wikipedia)
アニメとタイアップされ、アニメに先駆け連載が開始されたマンガ版『りりかSOS』。全4巻。
マンガの中で池野恋先生は、制作現場や、タイアップの経緯を巻末や巻中のオマケマンガに描いていた記憶がある。その中で……
「秋元康先生は『自由に描いてくれてよい』とおっしゃって……」というくだりがあったように記憶している。
「自由に描いて」にも程度がある。キャラ等の設定だけ考え、ストーリーは丸投げなのか。ある程度のあらすじは考え、細かい部分をマンガ家に任せるのか。
アニメタイアップ企画だったこともあり、秋元先生が初期設定等を作り、あとは(マンガの)プロにお任せ、というスタイルだったのかもしれない。
3・『真・餓狼伝』(/原作・夢枕獏)
『真・餓狼伝』(しん・がろうでん)は原作・夢枕獏、作画・野部優美による日本の漫画。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、2013年11号から2014年26号まで休載を挟んで連載された。(Wikipedia)
『餓狼伝』シリーズに登場する丹波文七の祖先であろう、丹波文吉を主人公とし、彼の学ぶ古武術丹水流柔術と講道館・嘉納治五郎や前田光世との因縁を描く、明治時代を舞台にした格闘マンガ。全6巻。
これまで、自身の小説がメディア化されること多数の小説家、夢枕獏先生。
数多くのコミカライズ作品や、その原作小説そのものを読んだことは多いが、特にマンガにおいては、「自由にやってください」とマンガ家に丸投げするスタイルだった。
夢枕獏先生には、自分の小説そのものこそ至高、小説だからこそ良いもの、という自信があり、他メディアの形になるならば、それはもう自分が関知せず、「マンガにしたい!」というマンガ家の情熱と才能を信じ、別の作品として楽しむスタンスを、必ずマンガのあとがきに書いていた。
そんな夢枕獏先生が、自身の小説のコミカライズではなく、最初から純粋に「マンガの原作を書く」という触れ込みで始まった『真・餓狼伝』。
小説として書かずに、マンガという形で最初に読者に物語が提示されるタイプの執筆は初のこと。そんな初めての、夢枕獏先生の「原作」。そんなん見てみたいに決まってる。
小説みたいに、夢枕獏先生の手書きの原作が、毎週毎週の内容が野部優美先生に届けられていたのだろうか。
漫画原作の現場はブラックボックス
1・言えないこともある(笑)
……と、たった3作ですが、一体どんな原作を書いてるんじゃろ? と気になる原作付きマンガを挙げてみました。
その他名前は書けませんが、リアルに名前だけという方もいますし、本来の原作者の裏にゴーストライターがいる例もあります。
また、原作者と作画担当のマンガ家と仲が悪くなり過ぎ、マンガ家が勝手に話を変え出し、原作者がいる意味のなくなってしまった原作付きマンガもこれまで数多いです。
怖いですね。ネットでまことしやかに語られている以上に、業界の現場にいると、「え、ほんとに?」とびっくりするコンビもいらっしゃいます。
そんな仕事で金もらえるの!? という形の原作を書いている(あるいはまったく書いてない)例も、編集者づてでまことしやかに話を聞きますが、危険過ぎてここでは言えませんw
2・「漫画原作」自体が“謎”の仕事
原作者がいるのに、その名前を完全に伏せている例もありますが、それは裏方、黒子に徹し、マンガ家の看板をきちんと立てる意図があったりもします。
樹林伸、狩撫麻礼他、原作者自身も数多くのペンネーム・別名義を持つことが多いですが、それは作品ごと、作家ごとのイメージを大事にし、原作者の名前を見て読者が引きずられないように、という意図があり、そういった意味では実は匿名原作者と変わりのない活動の仕方とも言えるかもしれません。
そんな“裏方”の現場だからこそ、「漫画原作者って何? 何書いてんの? どうやったらなれるの?」という、読者が疑問を持ちやすい職業なのかもしれませんね。
上に3作挙げたように、漫画原作者の私だって「何書いてんの!?」と気になって眠れないのですからw
ただ、名義を多く持っている漫画原作者は、ネットが普及している現代は、昔に比べ「何者だろう」と思われることは少なくなりました。
参考までに有名な漫画原作者の別名義をリストアップしておきます。
3・別名義を持つ漫画原作者の例
樹林伸=安童夕馬=青樹佑夜= 天樹征丸=有森丈時=伊賀大晃=龍門諒
狩撫麻礼=ひじかた憂峰=土屋ガロン
![迷走王 ボーダー コミックセット (双葉文庫) [マーケットプレイスセット] 迷走王 ボーダー コミックセット (双葉文庫) [マーケットプレイスセット]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/518mo0MjKsL._SL160_.jpg)
迷走王 ボーダー コミックセット (双葉文庫) [マーケットプレイスセット]
- 作者: 狩撫麻礼
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/01/15
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
長崎尚志=東周斎雅楽=江戸川啓視=リチャード・ウー

イリヤッド~入矢堂見聞録 文庫版 コミック 全10巻完結セット (小学館文庫)
- 作者: 魚戸おさむ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/06/20
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る

クロコーチ コミック 1-10巻セット (ニチブンコミックス)
- 作者: リチャード・ウー
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2015/07/18
- メディア: コミック
- この商品を含むブログを見る
……と、このように、大御所・大ヒット作を抱える漫画原作者ほど、名義をいくつも持ってたりします。私は「猪原賽」という名義ひとつ。底辺漫画原作者ですので、皆さんが出逢う私の作品など、カラーの付いてない初めての作家でしかありません。名義を複数持つ必要性なんてないんですよ、かなしいですね(笑)。
4・私の「漫画原作シナリオ集(電書版)」販売中です
上巻は107円、下巻は215円です。「猪原式シナリオ」で書かれたマンガ原作と、それに対する横島一さんのネーム作例が収録されています。
「kobo」「iBooks」等、電子書籍サービス各社でも発売中です。
>> Amazon.co.jpで「Kindle無料アプリをチェック」をチェック!
“原作論”のおさらい
過去このブログにしたためた、漫画原作者になるには? 漫画原作者は一体何を書いている? 猪原はこんな原作を書いている……そんなマンガ原作論3部作。
この中で「漫画原作者は一体何を書いているのか」で言及した、様々な形態の漫画原作。そのどれにもに当てはまりそうにない、まったく原作の“形”が想像が出来ない原作付きマンガが、私のマンガ読書体験の中で数人いらっしゃいました。それを紹介しようと思ったのが、今回のエントリーのキッカケでした。
よかったら下にリンク貼っておきますんで、過去記事も見てみてくださいね。
1・告知
漫画原作者・猪原賽の最新作、雑誌掲載情報です。原作を務める『放課後カタストロフィ』、構成を務める『仮面ライダークウガ』、どちらも月刊ヒーローズ連載です。
2・漫画原作者論
*1:なぜか敬称を付けなくてもいい気がする不思議