昨日Twitterにも書いた私が「豆ラフ」呼んでいるのはこの状態のネームのことです。
何がなんだかわかりませんね。当然です。セリフもかなり端折ってますし、絵もテキトーです。
でもいいんです。自分さえわかれば。
ネーム原作を描く場合は、まず大体の文字プロットを書きます。
それを編集者に見せ、こんなあらすじですよー程度の情報を伝え、意見を聞きます。
私は作家さんがネームを書きやすいように普段はそこからシナリオを書きますが、自分でネームも描いちゃう原作であれば、シナリオは書かずにいきなりネームを描き始めます。
ただし、上記のとおり「豆ラフ」と自分で勝手に呼んでいる状態のものを。
豆ラフはA4コピー用紙を四つ折りにし、見開き2つ分――4ページ分として使います。
ってかタッチパッドで手書きツレェよ!!
と、見開き構成でざくざくストーリーを進めます。
メクリ*1だけは考えつつ、コマ構成、だいたいの構図、キャラ配置等をどんどん描いちゃいます。
(自分だけがわかればいい程度に。)
プロットにない良いセリフや、必要なセリフがあれば、全部じゃなくていいのでちょこっと書き込んでおきます。
全体のページ数は考えません。増えれば増えていいし、少なくてもいいんです。
豆ラフでまず全部描いてしまうのは、例えば、
- 24ページに収めなくてはならないのにオーバーした
- (同様に)足りなかった
そんな時、じゃあどこを詰めるか、逆にどこを伸ばすか、そんな調整をする際に描き直すのがラクだからです。
場合によっては調整はこの次の過程で盛り込む場合もあります。
で、そんなふうに描いた「豆ラフ」を元に、次は編集者や作画の作家さんにわかるよう、きちんとしたネームとして清書します。
これが私が作画のマンガ家さんにお渡しするネームの現物です。
(ボツになった企画のネームを写メりました。たぶんこれはどんな形にせよ発表されないと思います。)
誰ですか、あんまり変わらねーじゃねーか!ってツッコむ人は!
セリフ、人物、擬音、そして若干の修正。その辺を含めて、
「豆ラフ」を見て自分だけがわかっている構成を、人が見てもわかるように描き直すわけです。
足したかったセリフもメモ程度のものを書き込んでおいたので再現は可能ですし、逆に同じ意味でより良いセリフに推敲も出来ます。
これ、二度手間のように見えて、自分にとっては1番早いネーム作成方法です。
構成を考えるにあたって「豆ラフ」段階で細かく絵を描き込む必要がないというのは、大きな修正をする時、描いた時間がムダにならないことですから。
おいそこ! ムダになるような描き込みしてねーじゃねえか!って言わない!!
もちろん、「豆ラフ」の段階から本番の「ネーム」に落とし込む際に、構図・構成を見直して改善出来るというメリットもあります。
マンガ家さんの中には、完全に下書きと同じレベルで描き込んだネームを作成する人もいると聞きます。
というか、ネームを拡大コピーしてトレス台で透かして即ペン入れに入るという方がいると編集さんに聞いたことあります。
それはそれで「下描きの手間を省く」というやり方なんでしょうが、それにはホントに構成の修正の必要が無いくらいのレベルのネームをサクッと描けるスキルが必要なんでしょうね。
私はそこまでネーム作成段階で計算が出来ません。
ネーム描けない、遅い、というお悩みのある方は、この「豆ラフ」→「本番ネーム」の二段構え、オススメですよ。
さて、私もこれからネームの清書をしないと……
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漫画のシナリオを書く為の作法、
シナリオからのネーム作成例。
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*1:見開きの左下のコマに、読者が次のページをめくりたくなるちょっとでも気になる要素を配置する漫画ネームのテクニックのこと。