第06道「バンドデシネ Q&Aコーナー」
ちわす。
突然開催、Q&Aコーナーです。
今次回作の準備中なんですが、出版社の返事待ちや脚本家さんのシナリオ待ちばかりでヒマなんです。
が、貯金もある訳じゃないので遊びに行く訳にもいきません。
この期間のじわじわ来るストレスは漫画家でもBD作家でも同じですね(笑。
プロジェクト自体はかなりの数の話が来てるのでどれかは近いうちまとまると思うんですが…。
ああ胃がいたい(笑。
というわけで新しい話もない事ですし、ご質問にお答えです。
質問1
猪原賽先生 @iharadaisuke に質問をお願いすると、日本人BD作家のオオシマヒロユキ先生が色々質問に答えてくれるそうベデよ~。僕もオオシマ先生が好きなBDとか、気になってるBDの作家さんとか知りたいですベデ!
— ベデくん (@BD_kun) 2013, 10月 7
主に作画家さんの話になってしまいますが、最近だとArthur De PinsさんやJérémie AlmanzaさんNicolas Nemiriさんが好きです。
Arthur De Pinsさんはエロチックなかわいい絵を描かれる大人気作家さんで、一時期は本屋に行くと彼のイラストがさまざまな本の表紙を飾っていました。
彼の可愛らしくてオシャレ、それでいて少しエッチなお話は日本でも受けそうな気がします。
Jérémie Almanzaさんはやはりデフォルメの効いた可愛らしい絵の方ですが、とても幻想的な雰囲気がありおもしろいです。
お話も幻想的で、絵本のような世界観のお話が多いですね。彼もやはり人気作家さんです。
Nicolas Nemiriさんは雰囲気のいいしっかりとした絵を描かれます。フランスのオシャレさがそのまま表現されているようなセンスのいい絵を描かれますね。日本の文化にもかなり興味がおありのようで、絵の題材にちょくちょく出てきます。
やっぱり売れっ子さんです。
Jérémie AlmanzaさんやNicolas Nemiriさんは日本の創作系の方々にも受けがいいんじゃないかな、と個人的に思います。
気になっているというレベルだとちょっとかき切れそうもないです。
すみません(笑。
日本人にはない構図や発想、デフォルメ、色使い、圧倒的な画力等、フランスの本屋さんに行くだけで絵が好きな人は楽しいんじゃないかな、と思います。
フランスに旅行予定の人は是非本屋さんのBDコーナー行ってみてください(笑。
あと、日本ではToppiさんの本が出たそうで、羨ましいです。私も大好きな作家さんですので、日本語版すごく欲しいです(笑。
■猪原による補足
Péchés Mignons, Tome 2 : Chasse à l'homme ! de Arthur de Pins http://t.co/gNiGYOkg84 @amazonfrさんから
— 猪原賽 (@iharadaisuke) 2013, 10月 11
Arthur De Pins
ちなみにこの方、アングレーム国際漫画賞「子供向け部門」でオオシマの『Crime School』と並んで『Zombillénium』という作品でノミネート、実際に受賞した方w
Eco, Tome 1 : La malédiction des Shackelbott de Jérémie Almanza http://t.co/AWN9OnUyZ2 @amazonfrさんから
— 猪原賽 (@iharadaisuke) 2013, 10月 11
Jérémie Almanza
- 作者: Jean David Morvan Nicolas Nemiri
- 出版社/メーカー: Ecole Des Loisirs
- 発売日: 2010/10/17
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
Nicolas Nemiri
シェヘラザード ~千夜一夜物語~ (ShoPro Books)
- 作者: セルジオ・トッピ,古永真一
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2013/09/28
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
Sergio Toppi
質問2
@iharadaisuke 折角の機会なので質問させて頂きます。
バンドデシネには日本(特に明治以前)をモチーフにした作品が比較的多いような印象があるのですが、フランスでは題材として日本は人気があるのでしょうか?
— イットン (@D8ynami8c) 2013, 10月 7
かなり人気がある部類だと思います。
印象派の浮世絵ショックから始まり、クロサワ映画、
そして大友先生のアキラショックからアニメ、
漫画と様々な物が長い時間をかけて浸透していますから。
今でもパリの画廊さんでは浮世絵を窓の一番いい所に貼っていたりしますし、
大抵の本屋さんには漫画コーナーがあったり、
映画では今なら今村昌平監督、黒沢清監督、三池崇監督達などが人気でDVDも町で簡単に手に入ります。
テレビなんかでもよく、日本の文化や田舎の風習を特集した番組が放送されているのを見ます。
最近は数年前に水木しげる先生がアングレームの最優秀賞をとられた事で、妖怪ブームに火がつきました。
本屋に行くと妖怪の事を解説した本やBDがあるんです。
なかなかシュールです(笑。
逆に萌え系漫画やアニメは、日本での報道ほどは受け入れられていないイメージです。
一時期「侘び寂び萌え」が世界の標準語に、なんて報道があったと思いますが、それはすこし偏向報道がすぎるかな、といった実感。
HENTAIだけはどこ行っても通じますけどね(笑。
江戸時代やサムライを題材にしたBDもありますし、人気シリーズもあります。
中には日本人としてみると多少違和感をおぼえる不思議なオリエンタリズムの世界観の物も多いですが、私がお会いした作家さんの1人Klemさんは、明治大正の日本の合気道の話を白黒でかかれていました。
彼の作品を隅々まで見た訳ではありませんが、日本人がかいた、といっても遜色のない程細かい所まで調べて描かれていて大変驚きました。
様々な書籍やインターネットでの情報を参考に描かれたのだそうです。
それだけの参考資料が手に入るほどに、人気のある題材なのだと思います。
以前も少し触れましたが、日本の漫画の影響で大きなコマ割りやセリフのないコマ等、技術的な面でもかなりの影響を感じられます。
少年少女向けジャンルでは題材そのものに日本を使う事は少ないもののかなり漫画に近いスタイルの作家さんが多いですよ。
■猪原による補足
Satori, Tome 2 : de Niko http://t.co/SKhqT1RXbB @amazonfrさんから
— 猪原賽 (@iharadaisuke) 2013, 10月 11
Klem
質問3
@iharadaisuke バンド・デシネというとスマーフが思い浮かびます。作者没後も別作家にて続編が作られていると最近知ったのですが、ご当地ではどう受け止められいるのでしょうか?あと、話は少しずれますが、仏ではスヌーピーやムーミンの評価もしりたいかですね。よろしくお願いします。
— つみきみぴょん (@tsumiki515) 2013, 10月 7
こちらでは作者没後に別作家が続編をかく、というのは珍しい事ではないようです。
もちろん、別作家がかいてでも続ける価値がある人気作品に限りますが。
あまり日本では知られていませんが、ヨーロッパではタンタンの次くらいに人気のある作品、
『スピルーとファンタジオ』にスピルー(Spirou)というキャラクターがいます。
余談ですが、ご質問のスマーフもこのスピルーを主題にした雑誌『Spirou』から生まれています。
この『スピルーとファンタジオ』は世代を超え、様々な脚本家、作画家によってかかれています。
中でもFranquinさんによる『スピルーとファンタジオ』は今でも人気が高いそうです。
Franquinさんは後にオリジナル作品でもヒット作、キャラクターを生み出し、日本で言えば手塚治虫クラスの超人気作家さんでした。
日本ではあまり知られていないのが惜しく感じます。
代替わりするたびにマニアックなファンの方々の中で様々な疑問や不満、不安があがり、シリーズを担当した作家により多少の人気、不人気シリーズの差はあるものの大抵の方々ははやはり興味をもって受け入れられ、新しいシリーズを楽しみにてらっしゃるようです。
スマーフには関わっていないので正確な事は言えませんが、やはり同じような感じではないでしょうか。
関連商品も本も今でも沢山出ていますから。
スヌーピーやムーミンはやっぱり人気がありますね。誰でも知っているキャラ、って感じでしょうか。
ただ日本と同じく、爆発的に売れる訳でもなく、じっくりうれ続ける、といった感じ。
ちなみに、ですが。私もこの『スピルーとファンタジオ』に関わっておりまして(笑。
漫画版『スピルーとファンタジオ』のパイロット版までかいた事があります。
その後大人の事情で今は無期延期状態ですが(笑。
これが発表された当時はフランス、ベルギーではもの凄い話題になりまして。
どれほどの話題かというと、あのディープインパクトが凱旋門賞に挑戦する時期でしたが
現地の新聞ではディープインパクトが紙面の1ページをつかった記事に対し、
日本人がスピルーをかく、と言う話題で新聞の2ページ見開きで紹介されたのです。
まあ日本じゃ一行の記事にもなりませんでしたけどね(笑。
また何かご意見ご質問等ありましたらお気軽にどうぞ。
BD関連でもそれ以外でも、知っている事ならお答えします。
ではまた。
【オオシマヒロユキ】
■猪原による補足
Spirou und Fantasio 01. Der Zauberer von Rummelsdoirf
- 作者: Andre Franquin
- 出版社/メーカー: Carlsen Verlag Gmbh
- 発売日: 2003/05
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
これがFranquinによる『スピルーとファンタジオ』。
発売日が2003年・ペーパーバック。ペーパーバック版として再版されるほど人気があるいうことだろう。
作家が代替わりし、オオシマヒロユキのBD『Clime School』のシナリオ担当、JD Morvanも一時期『スピルーとファンタジオ』のシナリオを書いていた。
- 作者: Jean-David Morvan,José Luis Munuera,Sonia Saura Martínez
- 出版社/メーカー: Editorial Planeta Deagostini, S.a.
- 発売日: 2008/04
- メディア: Perfect
- この商品を含むブログを見る
この巻は大の日本びいきであるMorvanの趣味が反映しており、多大に”日本”をフィーチャーしている。昔ながらの『スピルーとファンタジオ』ファンは、和服で日本刀構える主役二人を見てかなり面食らったと思う。
ちなみに猪原も渡仏前のオオシマも、この巻の作画のMunueraや、原作Morvanら BDアーティスト達が来日した際、江古田の飲み屋でお互い慣れない英語でなんとか酒を飲んだりラーメン食ったりしたことがある。懐かしいな。
元相方・オオシマヒロユキの在仏日記を当ブログのコーナーとして連載(?)するというのは、この直前の記事のとおり...