(画像はニコニコ動画『WUG!』チャンネルよりキャプチャ)
インターネット界隈だとなんか非難轟々、そして実際第1話を見た俺も『Wake Up, Girls!』はダメだと思ってました。
何かと話題の多い監督さんですし、漏れい出てしまった裏側の事情等、スタートから評価がマイナス状態なのは否定出来ない作品。
ですが、録画していた2話と3話を見て、俺は評価が完全に裏返りましたよ。
面白いです。
ぜひ最後まで完走し、きちんと作品が評価される事を望みます。
俺は劇場版を見ていません。TVで第一話を見た方も、ほとんどがそうだったのではないでしょうか。
おそらく劇場版を見た上でではないと、第一話はあまりにも唐突で説明不足。
そして何の予備知識のないまま見せられるステージ動画。
これは初見視聴者が困惑して当然だと思います。俺もそうでした。アイドルはスカートがひらりと翻っても、対策しているのが当然。それがいきなり丸見え状態。いくらなんでも視聴者への「媚び」があからさま(のよう)に見え、そこに嫌悪感を抱いた視聴者も多かったのは、TwitterのTL上の”実況”を見ていた事からも確かな事です。
が、これは劇場版の続き。『WUG』を擁護する声もわずかながらあり、劇場版のストーリーありきであれば、あの丸見えも当然の帰着点だったと。
いやいや、だから俺、劇場版見てないし! という俺を含めた否定派は、今期の新アニメのひとつとしか認識していなかったはずだし、その前提など知らんのですよ。
じゃあ見とけ! というのなら、じゃあ先に劇場版をTVで放送しとけ! となるわけです。こっちは最初興味のなかったものをTVで見て、それが面白いか否かで続きを見るかどうか決めるわけですから。
そういう意味では、劇場版ありきの・劇場版見たこと前提での「第一話」は、初見にはキツかった。
当然「じゃあ劇場版を見てみるか」とはならずに、同時に「第二話も見ることないか」となるわけです。
そこでネットで様々な裏事情が流れて来る。スタッフが大変みたいだ。続行が危ぶまれる――
正直、そこまで大変なことになっているなら、「大変なこと」に言及するためには、とりあえず見ておく必要があるだろう。
そうして俺は録画し放置していた2話と3話をまとめて見ました。
くっそ面白いじゃないか……!WUG!
1回で切ったら損してたとこだ!
アイドルマンガ、アイドルアニメはそれこそ先行する大人気作品が多いですよね。
アニメ・マンガ以外でも、去年はドラマ『あまちゃん』が話題になりましたし。
実はアレだけ話題になっていた『あまちゃん』、俺見てなかったんですよ。
なので『あまちゃん』含め、先行する「アイドル物語」に関する知識はある程度「知ったか状態」であることだけ、まず最初に断っておきます。認識を間違っていたりしたら申し訳ありません。
さて、その前提で。
俺は正直アイドルというものにハマった事はありません。
特に現在一番通りの良い名前で言えば「AKB48」といったユニットアイドルにハマるファンや、そうしたアイドルのCDがミリオンセラーになる日本の音楽業界に正直眉をひそめる事もありました。
が、ここ数年の友人関係で革命的な事がありました。
アイドルを追っかける友人が増え、そんな彼らに誘われて(チケットノルマを救済するために)アイドルライブに行ったりし、また実際いわゆる「地下アイドル」活動をする知人が出来たり、彼女らを支えるスタッフと名刺交換し現場の裏側を知ることが出来たりしました。
AKBにハマっている友人は言いました。
「曲は二の次で、舞台に立ち、ステップアップしていく彼女達の人生に感情移入し、応援している」
この言葉で俺は、完全に「アイドル」への見方が変わりました。
自分自身はハマる事がなさそうなのは変わらぬまま、そういうファン活動や、支えられるアイドルというものがいても何もおかしくない。
今はそう考えています。
AKBに比べくもない地下アイドルにしても、アイドルとファンの立ち位置は同じです。
今でこそこんな小さなハコでやっているが、いずれは大きな舞台に立ちたいと願い、そうしたアイドルの思いに、まだまだ少ないファンが集まり、応援し、盛り立てる。
彼女らは売れるために、名を売るために、自分の夢を叶えるために、自分の出来るラインを自分で引いたり、スタッフに指示されたりする。
(具体的にひとつだけ挙げれば、水着になるかどうかのライン。それが「歌」や「パフォーマンス」と関係ない事とはいえ、メディアに露出するかどうかのキッカケを生んだりする。)
ただしそれは、上昇志向で、アイドル坂を登ろうとしてる一部の者の話。
「地下アイドル」でワンマンライブを行える者は少数です。
俺が友人に誘われ行った地下アイドルライブは、たいていが「抱き合わせライブ」でした。
2、3時間のイベント中、俺がチケットノルマの為に唯一見るべきアイドルは、途中で2、3曲歌うだけのたった1人で、残りは縁もゆかりもない十把一絡げの地下アイドル達。
しかしそんな十把一絡げのアイドル達にもそれぞれファンがいて、そのファンは俺のノルマ・アイドルの事を、きっと俺と同じように思っている。
そんなカオスな地下アイドルイベントの中で、地下アイドル達がそれぞれの思いを抱いてステージに立っている。
それはもう、ここ数年だけで多くの地下アイドル達を俺は眺めて来ました。
完全にカルト的にファンを得ている実力共にあるアイドル、
そこに手が届きそうなあと一息のアイドル、
これからそんなアイドル坂を登っていこうとあがくアイドル、
そしてそんな「夢」など持ち合わせていないまま、「承認欲求」を満たすためだけのアニソンカラオケ状態のアイドル……
「地下アイドル」というジャンルをマンガに描く――そういういやらしさがあったのも事実ですが、ひょんなことからそんなライブイベントの裏方と顔見知りになり、名刺交換したり話を聞いたりした事もあります。
主に「地下アイドル」をマネジメントする事務所が、いったいどうやって儲けを得ているのか、どういう売り方で売り上げを上げていくつもりなのか。
そしてアイドル自身はどうやってステップアップしていく(つもりな)のか。
その裏の現場は、思った以上に泥臭く、そして怪しく、脆い「夢」に立脚した暗く儚い世界でした。
超メジャー級アイドル「AKB48」に憧れつつも、どう考えてもそこに辿りつけない者達の、一夜限りのから騒ぎ。
もちろん全員がとは言いませんが、俺が何回か訪れた地下アイドルライブには、そう見えるアイドル(やスタッフ)が多かった。
そこで『WUG!』の話に戻ります。
『WUG!』の2話や3話に描かれる地方アイドルの「裏側」は、俺の見たそんなリアルな地下アイドルの世界に迫っていた。
(テレビ東京 あにてれ Wake Up, Girls!より転載)
例えば「岡本未夕」はメイド喫茶で働いていた女の子。
第2話で出戻りでメイドカフェに戻った彼女は、カフェでの彼女の客相手にミニライブを行う。それはアイドルとしての持ち歌ではなく、アニソンを歌い、「この程度(の距離感と客の数)が身の丈に合っている」と言う。
もちろんお話的には「応援するよ!」と言う客の声に押され、WUGの活動への思いを強くするわけですが、実際「この程度」で満足している地下アイドルは多いです。
メイドカフェで客にちやほやされた結果、イケるんじゃね! 的に地下アイドルステージに立ってるんじゃなかろうかと思われるメイドと店の客 らしき 一団も見たことがあります。
(同サイトより転載)
例えば、「片山実波」。
第3話を見た限りは、仮設住宅に住むおばあちゃん達の民謡クラブでちやほやされていた彼女。
彼女は別の意味での才能を見出し、既にかなり「キャラ」の付いたアイドルになる予感がありますが、彼女を応援する最初のファンはあくまで民謡クラブのおばあちゃん達。親族と言ってもいいおばあちゃん達の探り探りのファン活動は、リアルの地下アイドルのライブで見かけた、十把一絡げの中の1人である「娘」の小さな晴れ舞台を見に来て、ファン達のオタ芸を始めとした現場の雰囲気に戸惑っている、「アイドルの親族らしき人」の立ち位置に似ています。
もちろんWUGはアニメ作品がゆえに、きちんと物語として盛り上げる、片山実波の「最初のファン」として美しく描かれていましたが。
例えば、第1話の妙なカメラワークのライブシーンに続いて、さっそく「水着回か!?」と話題になっていた第2話のスーパー銭湯の営業の様子。
あれはほんとに気持ち悪かった。が、リアルだった。
もちろんああいう営業があるかどうか、その現場に居合わせたり、話に聞いたことはないのだけど、地方のしょっぱい営業の話は聞いたことがあります。
地方は「アイドル・芸能人」への渇望が強く、たとえ誰も知らない地下アイドルでも、
「自分の知らない(地下)アイドル=東京では(きっと)知られた芸能人」
と脳内補正し、「温泉宿のステージ」は地下アイドルライブよりもかなり盛り上がり、儲かるのだとか。
物語ではかなり下品でショボい扱いを受けていたWUGメンバーですが、ああいう「営業」はありうる。
そして男性客がメンバーにしていた下品な振る舞いは、別の俺の経験から容易に想像がつく。
それは、「メイドカフェ」という場所をマンガや実体験で知っている者は当然知っている、「メイドには触ってはいけない」というルール。
俺も含めて絵に描いたような「おまえら」が集まるメイドバーに顔を出した時、一見で入って来た酔っ払いサラリーマンが、完全にキャバクラかそれ以上のものを期待してメイドに手を出し、ちょっとしたトラブルになっているのを俺は見たことがあります。
かわいらしい若い女子が水着で接客。
接客されるオッサンども。
WUGメンバーが受ける下品な仕打ちは、彼女らのファンではない勘違いしたオッサンどもから受ける可能性が高いリアルな扱い。
それも「売れない・誰も知らない」マイナーなアイドルだからこその現実。
先行する「アイドル物語」を考えるに、ここまで業界のリアルでイヤな部分に「イヤだ」と思わせる、嫌悪感を真正面から煽るものはあったでしょうか。
確かに、上記のように俺は現実の「裏側」を知っていた、という前提があります。
それを知らないと、単なる嫌悪感ばかりで、感情的に目をそむけるだけだったかもしれません。
だけど俺は知ってしまったし、ここで少し部分的にでも知らない人に伝えることが出来る。
アイドルというものを物語のテーマにするのなら、
キラキラとワタアメのようにきらめく表側だけでなく、水面下でもがく足を見たいし、書きたい。
ドギツい現実や下品なリアルさえも跳ね飛ばし、あるいはひた隠しにした上で、キラキラと光り輝く部分だけをファンに魅せることの出来る「プロのアイドル」の物語を見たいし、書きたい。
でも俺は今、そんな話を書いてないし、書く予定もない。
だけど『Wake Up, Girls!』は今、放送している。俺が書きたくて見たかった「アイドル物語」――
『Wake Up, Girls!』は既存の「アイドル物語」から一線を画す、そんな話になるんじゃないか。
3話まで見たところで、俺はそんな期待を持っているのです。
(同サイトより転載)
そんな底辺のリアルの中にいて、どうやら劇場版の前提エピソードとして全国区のメジャーアイドルユニット「I-1クラブ」のトップアイドルだったらしき「島田真夢」。
彼女を牽引役に、WUGメンバーは、どうしようもないリアルな地方底辺アイドルからどうステップアップしていくのか……
前掲の言葉で言えば「ステップアップしていく彼女達の人生に感情移入し、応援し」たい気持ちに俺はなっているのです。
ビルドゥングス・アイドル物語だもの、ハッピーエンドを俺は望んでいるし、余計な茶々で途中で投げ出される事を俺は望みません。
監督、スタッフ、声優さん達にはほんと頑張ってもらいたいし、期待しています。
だから、今更だが劇場版観なきゃいかん!w
Wake Up, Girls! OFFICIAL GUIDE BOOK (Gakken Mook)
- 作者: メガミマガジン編集部
- 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
- 発売日: 2014/01/09
- メディア: ムック
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