【猪原賽★春のキンドル祭り】開催中です。
4月は俺の作品全11冊の電書が発売になりましたよ!
実はKindleだけでなく、他社電子書籍サービスも同様に発売しているのですが、とりあえず電書として通りのいい「キンドル」を祭りの名前に付させていただきました。
その点、ご了承ください。
さて、こうした電子書籍、特にAmazonでは割引サービスが充実。
たまに何の告知もなく割引セールが行われ、その恩恵に預かった読者はバンバン買ったり、逆に安い値段で買うことになり、作者へのちょっとした後ろめたさもあるようです。
Twitter上でこんな質問を受けました。
@iharadaisuke 多くの読者は、作者にリスペクトがあり、電子書籍をセールで買うことにためらいがある人も少なくないと思うのだけど、作者としてはどうなのか、記事で読みたい。あと、kindle個人出版と、出版社経由の違いと。
— ntaro (@NTA) April 28, 2014
今回はこの質問に答えたいと思います。
1、電書セールに作者はどう思うか
結論から言えば、セールによって読者が後ろめたさ・ためらいを感じる事はまったく必要がありません。
セールされているから、作者への印税も減る。そんな想像をしてためらいを感じるのでしょうが、まったくそれは関係ないです。感じる必要はありません。
電書サービス、例えばAmazonが「セール」をすれば、その割り引いた分の利益を減ずるのはあくまでAmazonであって、
作者への印税率は、元に設定されていた価格から計算されます。
(たしか版元への利益もそのままのはずです。)
Amazonは日本に来た”黒船”として、電書の市場を席巻したい。
日本の電書サービス会社(出版社が運営しているもの、書店が運営しているもの)も、そんなAmazonのいいようにされたままではいたくない。
そんな双方が市場のパイを食うために、パイをでかくするために、どんどん読者に利用してもらいたい、顧客を抱えたい。
だからセールを打って、身銭を切って、電子書籍を買ってくれる客を呼び寄せたい。
そしてそのまま囲いたい。
それがAmazonや楽天koboのセール合戦の真相だと思います。
セールになれば、それが呼び水となり、自著が売れ、もとの設定値段から計算された印税が作者の収入になる。
そりゃセールされても売れる、読んでもらえる。作者うれしい。
セールに対する作者の思いなんて、それ以外ないと私は思うんですが。
少なくとも私はうれしいですよ。
どんどん買ってください。
2、Kindle個人出版と出版社経由の違い
これは私の『漫画原作のゲンバ』の例でお答えします。
元はと言えば、私が「賽の目記ブックス」というレーベルを立ち上げ、個人的にKindleで販売していた個人Kindle書です。
この4月、横島一さんのネームを全掲載し、マイナビから出版し直しました。
それにあたって横島さんとの連名著作となり、マイナビブランドの電子書籍として出版されています。
(賽の目記ブックス版は出版停止になっています。)
賽の目記ブックス版は、Kindle専売として販売していました。
これは印税を高く設定し、利益率を上げるためでした。
Kindleで電子書籍自前で出版する場合、「KDPセレクト」というコースを選べます。
KDPセレクトとは、端的に言ってしまえば、この本はKindleでしか販売しませんよ、その代わり高い印税率設定させていただきますよ、というサービス。
電子書籍を自前で作れば、そのデータはKindle他、koboやiBooksでも販売出来ます。
その印税率はほぼ横並びなのですが、これをKindle専売と設定することで、印税率がおよそ倍の額になります。
ですが、売れない。せっかくKDPセレクトで設定した高い印税率も、売れなければ当然利益は上がりません。
個人で販売しているんですから、その電書の営業も、自前のブログやTwitterに限られます。
もうおわかりですね?
今回、『漫画原作のゲンバ』をマイナビという出版社を経由して販売し直しをしたというのは、ひとえに出版社の営業力、ブランド力を期待してのことです。
また、いちいち電書サービス各社に俺個人が登録する必要はありません。
それはマイナビさんのお仕事になります。
Kindle専売にして印税率を高く設定するという事は出来ないけれど、
手間なく電書各社で自著を販売出来、
出版社のブランド力、営業力次第では、個人で売るより遥かに多い部数が出ることを期待出来る。
というわけです。
で、その場合作者の印税率や、出版社(ここではマイナビさん)の取り分はどうなるんだ? という話になると思いますが、そこはたぶんあんまり書かないほうがいいかな?w
やめとこうw
3、俺の私見
紙の出版と電子書籍。
最近出版された自著の値段を見る限り、電書のほうがかなり安くなっています。
これは電子書籍の普及を期待したい私個人としてはとてもいいこと。
この3冊は、紙の実書に比べるとセールされるまでもなく、デフォルトがかなり安く、ほぼ実書の半額です。安い!
しかしということは、印税もその分「1冊売れたらいくら入る」みたいな計算をすれば、その額も半額です。
【0504追記:過去の紙のコミックスを電書化した場合、印税率は若干高くなります。が、それは紙→電子で他作家他作品も一律の数字のようで、今回の『悪徒』や『伴天連XX』3巻のように紙→電子の定価が半額となったからと言って、逆に印税が倍となるということはありません。】
また紙のコミックスは出版社が決めた部数を刷ったら、その冊数×印税率の印税がまとめて入って来ます。
電書の場合は如実にサーバに残る売り上げから印税が計算されます。
実書は5000部刷れば、作者には5000部分の印税がまとめて入り、いくら本が余ろうと「返して」なんてこと言われません。
(もちろん全部売り切って、さらなる増刷をされ、さらに印税が入って来ることをマンガ家は皆ユメ見ています。)
電書は毎月ごとか、四半期ごとか、半年に1度か、年に一度か、その期間は会社によって違いますが、如実にDLされた冊数分の印税が計算され作者に支払われます。
そういう意味では、マンガの人気がDL数に直結し、収入にも直結。
実書の半額の電書が、実書の印税と同じ収入となるためには、実書の部数の単純計算・倍のDLを期待せねばなりません。
【こちらも上記編集箇所と同様】
いやあ、こわいこわい。
この小説、実は表紙イラストは猪原が個人的に発注し、デザイン作成料を猪原個人が支払っています。
赤字です。マイナスからのスタートです。
概算ですが、300部DLされてからの収入が、やっと俺の収入になるみたいな感じです。
むりげです。
まだまだ電子書籍の市場は小さくて、過渡期にある。
だけどiPhoneやiPad、Android端末やタブレット、1冊買えばどの端末でも読めて、かさばらない。
紙の本のほうがいいや、という読者が多くいるのは重々承知の上、
紙の本とはまた違った魅力やメリットが電書にはあって、
当然その売り上げは作者に直結している。
私は電子書籍の市場の拡大を期待していますし、それに伴って俺の電書もどんどん売れて欲しいなあと思います。
そのためにはいろいろクリアしなくてはならない問題、システムがある事、このブログの他のエントリーでも書いてますんで、ぜひ下記リンク先も合わせて読んでいただければと。
■「あなたはKindle等の電子出版物を買った事がありますか?」と学生に訊いてみたらけっこう絶望しちゃった話
■資料をアナログでファイリングしつつ、この前嵐のように拡散された「電子書籍の現状」について補足する
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というわけで、今月は俺の本が11冊もKindleストアに登場するプチ祭り状態。
下記リンク先からぜひチェックしてみてください!
※Kindle電子書籍はKindle端末をお持ちでなくても、iPhoneやiPad、Android等スマホ・タブレットの無料アプリ「Kindle」を導入することにより電子書籍を読むことが出来ます。
Kindle及びKindleアプリで、ご自身の環境に合わせて楽しい自由な読書ライフを猪原はオススメします。
(PC版のKindleアプリケーション出ないかなー)