明日発売のKindle限定、描き下ろしコミックス『オーバーペイントRe:PAINT』の告知をしつこく打っている漫画原作者・猪原賽のTwitterアカウントはコチラ(@iharadaisuke)です。さて、そんな告知TLに、こんな質問が来ました。
「Kindleでしか読めない“描き下ろし”マンガのメリットって何ですか?」
この質問にはTwitterで一言では答えられないので、ブログエントリーとして回答いたします。
KDPで描き下ろしマンガを発売する目的・メリット
『オーバーペイントRe:PAINT』に関する読者からの質問
@iharadaisuke
キンドルで描き下ろしなら
キンドルでしか読めないんですね。
もったいないような気もしますが・・・
期待しています。
— 松下正敏 (@neneshiba10) 2016, 1月 6
@iharadaisuke
続けてすみません。
週刊誌や月刊誌が単行本を売るための宣伝誌となっている
なかで、描き下ろしというのは認知してもらうのも難しい
と思うのです(口コミやサイトでの宣伝とか)宣伝に
力入れているところや描き下ろしのメリットって何があるのか
教えてください
— 松下正敏 (@neneshiba10) 2016, 1月 6
これは、私のTwitterアカウントのフォロワーさんの、私宛の質問。
明日発売予定の『オーバーペイントRe:PAINT』を予約購入いただいた上で、ご質問いただきました。 松下さん、まずはご購入ありがとうございます。
描き下ろし読切マンガを発売するにあたって力を入れているところ
「週刊誌や月刊誌が単行本を売るための宣伝誌となっているなかで、描き下ろしというのは認知してもらうのも難しいと思うのです」というのは、短いセンテンスの中に、今の日本のマンガ業界の状況が書かれていると思います。マンガ雑誌はコミックスを売るための宣伝誌。だからこそ、雑誌自体は赤字でも、コミックスの売上で利益を回収し、またコミックスを作るためのコンスタントなマンガの連載……という構図。
そして、そんな「コミックス」に至るまでの作家の、最初の一歩として、前回のエントリーで述べた「マンガ雑誌に読切マンガが掲載される4つの理由」が発生します。
マンガ雑誌に「読切マンガ」が掲載される“4つの理由”と“一期一会のレア度”について
新人の顔見せ、連載枠への挑戦、新連載に向けてのプロモーション、コミックス発売のプロモーション。
ですが、今回お届けする『オーバーペイントRe:PAINT』は、広く読者に顔見せする、「雑誌」媒体での掲載はありません。完全な描き下ろし(と、過去のコミックス未収録だった読切の抱き合わせ)です。
「おっ、こんな読切があるぞ」という雑誌読者の認知はいただけませんが、即作品単体での販売ですので、逆に雑誌掲載の場合のような「1週間・1ヶ月」の短い命ではなく、これから(Kindleのサービスが終了しない限り)買って読んでもらうことが出来ます。
だからこそ、こうしてブログに告知をし、Twitterに告知をし……、ネットを介した「草の根活動」をするしかありません。
力を入れている、というのは、主にこの部分です。ぶっちゃけ、私がブログで「業界トーク」をするのも、マンガに興味のある読者がこのブログに、エントリーに辿り着くことで、「こんなマンガをKindleで売ってるんだ」と、ついでに気づいてもらえればな、という目的で書いています。
なのでこのエントリーを見ている皆さん。ぜひ積極的に『オーバーペイントRe:PAINT』を、買わずとも!Twitter等で「こういうマンガあるらしいよ」と拡散いただければなと思います。
ひとりでは限界があるネットプロモーション
とはいえ、私がこうブログを綴っても、ネットの力に期待をしても、なかなか効果のあるものではありません。だからこそ、
(きんどうりさいくるより転載)
きんどうさんのこの「1月8日Kindle一斉発売!餅をテーマにした電子オリジナル作品企画」に乗っかる形で、Kindleコミックスの発売を決意したのです。
ひとりでがんばるには限界がある、それを、同じ主旨で集まるマンガ家さんと、それをまとめるきんどうさん、そしてきんどうさんの運営するKindleニュースサイト「きんどるどうでしょう」のメディアパワーがあれば、たったひとりでコソッと売り出すよりも、まとめて認知度アップの可能性が高くなる。
もしこの企画が成功し、Kindleストアのランキングに我々企画参加者の【餅】マンガが食い込めば……電子書籍で読切作品を、マンガ家本人が販売すること自体にメリットが生まれ、電子書籍業界もいっときのブームや、好事家の密かな楽しみ以上の“文化”として成熟するのではと。
私は、今回の企画で「印税100万を目指す!」というお題目以上に、電子書籍の認知度が高まればなと思っています。『オーバーペイントRe:PAINT』は、そうした意味で、「やらないよりもまず手を出すこと」、これが大事なんだろうなと。
担当編集に「ブログばっかり書いてないで仕事してください」と怒られても、こう日々エントリーを重ねているのは、あくまで自分が漫画原作者として、紙だろうと電子だろうと、長く活動したいがための道作りの一歩一歩だと思っています。
(だから許してください、担当T氏……w)
<余談>ネットメディアの力を借りて手軽に過去作をデジタルで売る方法
「マンガ図書館Z」という、赤松健先生の無料マンガサービス。こちらは私も『下町狂い咲きキネマ』『学園ノイズ』を提供していますが、商業誌に掲載された未単行本化作品や絶版になったコミックスを、WEBで読者に無料で読んでもらおうというサービスです。
そのサービスは単に「無料で読んでもらう」だけに限らず、現在は「Kindle化の代行」、PDFデータの販売、そして1冊から読者が印刷してマンガの現物を手に入れることの出来るPOD(プリント・オン・デマンド)サービスもしています。*1
マンガ家自身が、自前でKindleデータを作成する必要がなく、
完全にお任せでコミックスをKindle化でき、
サイトにまとめて掲載されることで、読者に「これも読めるんだ!」「こんなのあったんだ!」と気づいてもらえる。
KDPを自分でやるのが手間、プロモーションが手間、というのであれば、こういう方法もありますよ。
KDPで描き下ろしマンガを販売するメリット
今回Kindleで販売する『オーバーペイントRe:PAINT』は、プロのマンガ家、プロの漫画原作者が自ら販売するものです。作品づくりの中で、編集者はいません。きちんと面白いマンガに仕上がっている自負はありますが、その立ち位置は「創作同人誌」と何ら変わりありません。
『オーバーペイント(2011年版)』という商業誌に発表された過去作を抱き合わせにしていますが、過去に、未単行本作品を同人誌で出版するマンガ家さんも多くいらっしゃいました。やはりそれも「同人誌」であり、本来はコミケやコミティア等のイベントや、同人誌専門書店でしか買えないものでした。ですが、それをKDPでKindle書として販売すると……
トップの画像をもう一度。これは私のiPhoneの、Kindleアプリの本棚です。これまで出した私のKDP・Kindle書『漫画原作者は一体「何」を書いているのか』『Revolver-リボルバー-』が、小説や新書、マンガ……商業出版と並んでいるのがわかると思います。
もうおわかりですね。その本質は「同人誌」と何ら変わりないKindle書が、通常の本屋で並ぶ「商業出版物」と同じ土俵に上がれるのです。
amazonという超大手通販サイトで、「猪原賽」という作家名を検索すれば、私がこれまで出版した商業出版物と「同人誌(といえるもの)」が並んで表示され、販売されている。
雑誌には掲載されない代わりに、他の商業出版物と変わらず、私の名義の出版物として、販売される。これが「KDP・Kindleで描き下ろしマンガを発売するメリット」です。
ぜひ拡散・ご購入ください
『オーバーペイントRe:PAINT』、原作・猪原賽/漫画・横島一。幻のコミックス未収録作『オーバーペイント(2011年版)』と、完全新作描き下ろし『オーバーペイントRe:PAINT』合わせて91ページ、250円→10日までスタートダッシュセール【99円】!
上層部の分裂騒ぎに揺れる「邪馬淵組」。その屋敷では近隣住人のための正月恒例「餅つき大会」を自粛し、たったひとり残った組員・ケイイチと親分で、2人寂しく餅つきをしていた。暴力団を排斥する世間の流れに、屋敷の壁は悪意の落書きだらけ……。
そ んな時、壁の落書きアート「グラフィティ」を描くストリート・アーティスト「ヌリコ」が現れ、屋敷の門に「龍」のグラフィティを“上描き”してしまい―― 犯罪スレスレのストリート・アート「グラフィティ」に新たな“意味”を与える、驚愕のストリート系少年マンガ、完全描き下ろし31ページ!
Amazon.co.jp: オーバーペイントRe:PAINT 電子書籍: 猪原賽・横島一: Kindleストア
上では「ほぼ同人誌」と書きましたが、自信を持ってお届けする完全新作描き下ろし! プロの犯行(?)! ぜひお買い求めください!
<関連リンク>
2016年は個人電子書籍元年にしたい!ので、マンガ家さんたちによるKindle短編マンガ配信企画をはじめました - きんどうりさいくる
*1:現在、対応作品は未単行本化作品に限る。