漫画原作者の猪原賽(@iharadaisuke)ですこんにちは。Kindleニュースサイト「きんどるどうでしょう」管理人、きんどうzonさんが企画した「【お餅】マンガ描き下ろしKindle本99円セール」が終了しました。企画の主旨に賛同した8本のマンガは、現在作家各個人の設定する価格になり、販売は継続されています。
『オーバーペイントRe:PAINT』99円セール結果発表
漫画原作者・猪原賽と、マンガ家・横島一のタッグで挑んだ、【餅】をテーマに描き下ろしたKindleコミック『オーバーペイントRe:PAINT』ですが、コミックス未収録だった過去作『オーバーペイント(2011年版)』を抱き合わせで販売するという反則*1に出て、91ページボリュームのマンガが99円とあり、多くの方にお買い求めいただけました。
99円セールをした1月8日〜11日の4日間で、合計311部販売、印税9,760円となりました。
Kindleに限らず、商業紙出版物も含めた総合マンガランキングでも、100位圏内(最高83位を確認しています)に入る好成績。実はこのランキング成績、おそらく私が普通に出した商業出版物でも、これまで見たことがありません。
私の宣伝ツイートに辟易したフォロワーさんも多かったと思います。しょうがねえ、こんなにしつこくちゃ買ってやるか、という方もいたと思います。すいません、まだしばらく宣伝すると思いますw
しかし何より、そう周知させるしつこい営業により、「これまで電子書籍買ったことなかったけど、これを機会にスマホにKindleアプリをインストールしたよ」と言ってくれる方が多くいらっしゃって、良かったなと思います。
きんどうさんのこの企画「2016年を“電子書籍元年”としたい」テーマで立ち上がったもの。「電子書籍≒Kindleではない。他の電子書籍ストアもある」とのご批判もいただきましたが、業界最大手であるKindleでさえ使っていなかった方が、マンガや本を読むひとつの手段として、認識し導入してくれたこと、これだけで少しは電書の普及に務められたかと思います。
『オーバーペイントRe:PAINT』は正規の価格、250円に戻りましたが、Kindle限定で紙の出版物がないことは今後も変わりがありません。まだご購読いただけていない方も、いずれはお買い求めいただけたら幸いです。
上層部の分裂騒ぎに揺れる「邪馬淵組」。その屋敷では近隣住人のための正月恒例「餅つき大会」を自粛し、たったひとり残った組員・ケイイチと親分で、2人寂しく餅つきをしていた。暴力団を排斥する世間の流れに、屋敷の壁は悪意の落書きだらけ……。
そんな時、壁の落書きアート「グラフィティ」を描くストリート・アーティスト「ヌリコ」が現れ、屋敷の門に「龍」のグラフィティを“上描き”して しまい――犯罪スレスレのストリート・アート「グラフィティ」に新たな“意味”を与える、驚愕のストリート系少年マンガ、完全描き下ろし31ページ!
幻の単行本未収録作品『オーバーペイント』(2011年版)前後編60ページも完全収録。
>>Kindleストアで『オーバーペイントRe:PAINT』をチェック!
ご意見・ご感想をぜひ!
あ、ご購読いただけた方はぜひご意見・ご感想等いただけると! amazonでのレビューは賛否両論いただきたいですし、さらっとTwitterで……という方であれば、ぜひ「#モチコン」ハッシュタグを付けて呟いてもらえますと、私だけに限らず、参加マンガ家の皆さんや、企画主催者のきんどうさんにの目にも届きます。よろしくお願いいたします。
反省点と課題
100万円は遥か遠い道
私の作品で、amazonランキングで好成績……と言えど、反省点はないわけではありません。そもそもきんどうさんの企画が立ち上がった際は、こういう文言で企画参加者を募っていました。
1月にお餅をテーマでマンガを書いていただければ、マンガ家さんが電子書籍で印税100万儲かるまで無料で働きます - きんどうりさいくる
「印税100万」。これが目標でした。が、311部、コミックランキング83位の好成績であっても、それは【99円セール】中のもの。稼いだ印税は微々たるものです。(9,760円、と上に書きましたねw)
実は私は、横島さんに印税前払いという形で、ある程度の原稿料をお支払いしています。大赤字です。それを補填するのは、今後250円と正規の価格になった『オーバーペイントRe:PAINT』の継続的な売り上げに期待するしかありません。
電書はKindleだけではない
また、上項でも述べたとおり、「Kindleだけが電書じゃない」。楽天kobo、iBooks、Google Playブックス……個人出版できる電書サービスは他にもあります。きんどうさんの企画の意図は“電書元年祈念”であり、“Kindle普及祈念”ではない。
様々な会社の「電子書籍」という媒体が、もっとみんなに認知され、普及するといいなというもの。
しかしそこはKindleをメインに扱っているニュースサイト「きんどるどうでしょう」管理人であり、まずは電書の入り口として、最大手のKindleでさえ知らない人に届けばいいなという意図があったんだと思います。上記企画告知エントリーにも、
(エントリー作品を販売する)各マンガ家さんがさら複数の電子書籍ストアで配信や、即売会で売ることを否定することはありません。
とありますように、この4日間で販売されたエントリー作品の、その後のマルチストア販売を否定するものではありません。
ですが、まず「電子書籍でマンガを作り販売する」という手段を考えた場合、やっぱりKindleデータを作成する「Kindle Comic Creator」という無料ツールが楽チンだったことは否めません。その他Kindle以外の電書サービスの、そのフォーマットに合わせたデータを再作成し販売を開始するには、もうちょっと勉強して、登録などしなくてはならないので……
『オーバーペイントRe:PAINT』は現在Kindle限定ですが、いずれその他の電子書籍サービスでも販売を開始するつもりです。
きんどうさんの言う「印税100万」とは、Kindle印税ではなく、「電子書籍で印税100万稼ぐまで」という話ですからね。単なる4日間のお祭りで終わったわけじゃないのです。その額まで早く到達するまで、私も努力しないとなりません。
商業出版の連載も抱えています。今年は新作・新連載の準備もしています。
実際、作者自らがKDPを利用してマンガを販売する体験をしてみたからこそ、今後の商業出版のマーケティングの参考になるかもしれません。電子書籍という媒体にどう挑んでいくのか、作者は何ができるのか。そんなおぼろげな課題や目標を立てることが出来た。
今回きんどうさんの企画に乗り、体験したことは、貴重な糧となると思います。
これからも、16年のキャリアある業界人として、マンガ業界の裏話や作品の告知を、こちらのブログ「漫画原作者 猪原賽BLOG」でしていくつもりです。
よかったらこのままお付き合いいただき、PCではブラウザ右上/スマホではエントリー上下の「読者になるボタン」から読者登録や、私のTwitterアカウント(@iharadaisuke)のフォローなどいただけると幸いです。
これから電子書籍をはじめようと思うマンガ家さんへ
さて、こんな私のここしばらくのプロモーション活動を見ていたマンガ家さんはいらっしゃいますか? 電書でマンガを発表してみようかな、と思ったりしています?
今回の企画に参加して、たとえ印税収入が微々たる額であっても、プロモーションの大事さを思い知りました。
電書を出すだけなら簡単なんですよ。Kindleだけと限定するなら、なおさらです。上にも紹介した「Kindle Comic Creator」を使えば、マンガの素材となるページのjpgを用意するだけで、すぐKindle本のデータが作れます。それをKDPに登録するだけ*2なので、大した手間はかかりません。
ですが、単に登録するだけでは、本は売れないのです。
- 発売日を設定し、予約期間を設け、
- 予約リンク先を付した告知ブログを連投し、
- 発売開始後もブログやTwitterで告知徹底する。
私がこれまで出したKindle本は、ほぼ登録即販売開始、告知もTwitterのTLを汚さないよう、最低限にしていました。
……が、今回『オーバーペイントRe:PAINT』の販売は、かなり積極的にツイートさせてもらいました。そんなここ数日の告知ツイート連投に辟易するフォロワーさんもいれば、どんどん流れるTLに「今知った」というフォロワーさんさえいるんです。
また予約期間を設け、その間告知することで、初日の売り上げがブースト。総合ランキングに入り、のちの販売部数にも繋がったのは確かです。
(ちなみに311部のうち、初日の販売数は168部。ほぼ半数が初日の売り上げです。)
「いい作品は黙ってていても売れる」なんてことはありません。特に書店で面置きされるわけでもない電子書籍は、自分のファンや友人知人のフォロワーさんの購入や、ランキング一覧から見つけてくれる一見さんのインスピレーションに期待するしかありません。
まずそう気づいてもらうために、文字通り声を大にして「新刊出たよ!電子書籍だよ!」とプロモーションすることに遠慮をしている場合じゃないな、と自ら振り返りつつ、これから電書を始めようというマンガ家さんにもお伝えしておきます。
猪原賽・Kindle本近著
これさえ読めば「漫画原作者」になれる!誰も知らないマンガ業界の“裏側”を公開!
『学園ノイズ』『悪徒-ACT-』『放課後カタストロフィ』などを手がけマンガの原作だけで15年間以上生き抜いている著者が、マンガ業界で学んだノウハウを伝授。
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オオシマヒロユキ+猪原大介(現・猪原賽)の最初の合作マンガ。
2002年に発行された同人誌から初の電子化。
Amazon.co.jp: Revolver-リボルバー- 電子書籍: オオシマ ヒロユキ, 猪原 賽: Kindleストア
上層部の分裂騒ぎに揺れる「邪馬淵組」。その屋敷では近隣住人のための正月恒例「餅つき大会」を自粛し、たったひとり残った組員・ケイイチと親分で、2人寂しく餅つきをしていた。暴力団を排斥する世間の流れに、屋敷の壁は悪意の落書きだらけ……。
そんな時、壁の落書きアート「グラフィティ」を描くストリート・アーティスト「ヌリコ」が現れ、屋敷の門に「龍」のグラフィティを“上描き”してしまい――