ブログ「なめくじ長屋奇考録」の運営者でインディーズ出版社「おおかみ書房」の代表でもある劇画狼(げきがうるふ)さんの独演会「このマンガがひどい!スカベンジャー・ハント」に行って来ました。彼の注目するマンガは「このマンガがひどい!」というフレーズにも表れているとおり、ほんとにヒド過ぎて逆に笑っちゃうマンガ。特に彼は“エロ劇画”に注目して紹介していますが、彼のイベントはマンガの多様性・自由さを再発見して面白いんですよね。
本家より面白い!?「このマンガがひどい!」
「なめくじ長屋奇考録」というブログに私が注目するようになったのは、毎年「このマンガがすごい!」が発表される年末に、彼がブログで発表する「このマンガがひどい!」のネタエントリー。
昨年末は今回のイベントの準備もあってボリュームは少なめだったので、2014年末の「このマンガがひどい!」を紹介すると――
(※エロ劇画を主に扱っています、成人向け表現多数ですのでご注意を)
なめくじ長屋奇考録 「このマンガがひどい!2015」前夜祭 ボツネタ大放出大会!!
なめくじ長屋奇考録 「このマンガがひどい!2015」第一夜!! この世には不思議な事など何もない。全て、おまえらのせいだ!
なめくじ長屋奇考録 「このマンガがひどい!2015」第二夜!! 全員逃がすものか!ここ6年で発売されたエロ劇画雑誌、リアルに全部自費で買って読んでるからな!!
なめくじ長屋奇考録 「このマンガがひどい!2015」第三夜!! なめくじ長屋からあなたへ。 好きなことで、お前を殺す!
どんなにヒドイかは、リンク先を見に行ってもらうとして……でもね、これみんなマンガなんですよ。商業で出版された、ガチのプロのマンガなんですよ。
劇画狼さんは「このマンガがすごい!」の選者ライターでありながら、
…すごいマンガは宝島社が決めろ。
だが、ひどいマンガはなめくじ長屋が決める!!
そして集めに集めたひどいマンガから、特にひどいマンガを紹介する。それが例年の「このマンガがひどい!」エントリーであり、今回そんなひどいマンガを紹介するスライド&トークショーが「このマンガがひどい!スカベンジャー・ハント」だったわけです。
そのイベントの模様は、当日イベント撮影&ネットさらしOKだったので、ぜひTwitterハッシュタグ「#劇画狼独演会」を追っていただいて。
「ひどいマンガ」に見るマンガの多様性と狂気性
とにかく、劇画狼さんが見つけてくるマンガは「ひどい」のひとことでくくれない何かがあります。狂気だったり、単なる抜けだったり、壊れちまったレコードプレーヤーにしか思えない天丼芸だったり。プロの原稿でありながら、プロだったらまず最初の「ない」と判断すべき、NGの数々。でもGOが出ちゃったネタ、コマ、セリフ、絵――
マンガが売れない売れないと言われる今、オーソドックスに、そして冒険しないで、でも売れ線を狙うマンガの作り方や売り方が多くなっていますが、映画やテレビ、ゲームと違い、作者の一存で脚本からカメラワーク、構成、すべて作れるのがマンガです。
冒険してか単なる天然か、「このマンガがひどい!」と言われるマンガの、さまざまな「ひどい!」面は、そんな作者ひとりによる制作物*1であるがゆえの、マンガというメディアの多様性を考えちゃうんですよね。だって、ここまでひどいと、映画なら、テレビなら、ゲームなら、きっと誰か止めるもん。
売れなくても、きっと誰かが見ていて、一生覚えててくれる1コマを、彼らは描いている。
最近、新連載の企画を何本か立てている私は、どうも売れずにじりじりしている状況に焦り、何が売れているのだ、どういうのが受けるのだ、どうすれば「このマンガがすごい!」に注目されるのか……!? とアタマでっかちに考えがちで難航してたりしますが、「このマンガがひどい!」に注目されるような“狂気”こそ、マンガというメディアでやっている以上、必要な部分なんじゃないかなーなんても思ったりするのです。
■左:猪原賽/右:劇画狼さん
ともかく、「このマンガがすごい!」だけでなく、劇画狼さんの「このマンガがひどい!」も、マンガ読みなら注目すべきマンガキュレーションです。マジマジ、大真面目に俺はそう思ってるの。
漫画原作者としてKindle本を自己出版しています
『学園ノイズ』『悪徒-ACT-』『放課後カタストロフィ』などを手がけマンガの原作だけで15年間以上生き抜いている著者が、マンガ業界で学んだノウハ ウを伝授。「マンガの原作」とは何か、どんな「原作」を書けばよいのか。なかなか表に出て来ない「マンガの原作」の実作例や心構え、初心者がおちいりやす い間違いなど、業界体験談をまじえつつ、わかりやすく解説。【99円】
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*1:スタジオ形式でもメインとなる作家さんの主導なので、こういう書き方をしました。