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漫画原作者 猪原賽BLOG

「学園ノイズ」「悪徒」「放課後カタストロフィ」の原作者/ブロガーが告知したり漫画の作り方、関連ニュースをお伝えします

マンガ家志望者に「回り道のススメ」“経験”と“妄想力”がマンガのネタに生かされる

マン語り! 業界 絶版マンガ図書館

f:id:iharadaisuke:20160225134840j:plain漫画原作者の猪原賽(@iharadaisuke)ですこんにちは。マンガ家になりたい人は家にこもって絵の修行ばかりしがちですが、仕事やバイトをするのもあながち悪くないですよ。マンガのネタを拾うには良いことですよ、という、私の実体験を軽く述べようかと。

マンガのネタは“実体験”から

 “アルバイト歴を晒せ”

Twitterでこんなハッシュタグがあったので、自分のバイト歴を振り返ってみました。

まあ私自身も、軽いコミュ障患ってたんで、対面の客商売やバイト仲間や上司のいる仕事、苦手だったんですよね。そんな私の少ないバイト歴の中でも、特にヤバかったのが「チラシ配り」。

普段街で見かける、散歩がてらチラシを配ってるようなダラダラバイトかと思いきや、応募してみれば「ウチはチラシ配りの中でもトップクラスにつらいです」という社員さんの最初のひとこと。
バッグに紙束詰めて、適当に配り歩く……なんてレベルではなく、

  • 登山用リュックサックいっぱいにチラシの束ずっしり(約2、30kgはあったと思う)
  • 5、6人のチームでクルマでチラシ配布地域に乗りつけ
  • 担当地域を最低小走り、歩いてたら全部回れない
  • それでも半分量、同じ量を補充し、1日にリュック2杯分のチラシを配る

1ヶ月間そのバイトを続けましたが、てきめんに痩せましたねw 私の歴代の中でも特にツラいバイトのひとつでした。ですが、そんな経験もマンガのネタに繋がるんです。

『ものミコ』の元ネタはチラシ配りのバイト経験

先日「マンガ図書館Z」で公開になったばかりの『ものミコ』。これはそんなチラシ配りのバイト経験が活かされ、生まれた物語です。

f:id:iharadaisuke:20160225140451p:plain主人公・昇太郎は親から受け継いだアパートの家賃収入で生計を立てる、少年管理人。住人からのチラシ「ポスティング」の苦情に悩んでいます。
(ポスト開けていらんチラシが入ってるとイラッとしますよね。ハハハ……)

f:id:iharadaisuke:20160225140718p:plainポスティングする奴にひとこと文句言ってやろうと外に出た昇太郎は、チラシがいっぱい詰まったでっかいリュックを持った少女と出逢います。
(私が実際に背負って駆けずり回っていた時は、このリュックより大きかったんですよ……!!)

f:id:iharadaisuke:20160225140934p:plain部屋にたまったチラシの山。迷惑だからやめてくれ、と昇太郎は少女に直接苦情を言う。
(実際ポスティングしていた身から言えば、文句を言われることは仕方ないです。でもその場で文句を言うより、きちんとクレームしてください。するとポスティングバイトにその都度渡される配布地域地図には「配達禁止」指定がされ、その物件にはチラシを配らないよう指示されます。これを「配禁物件*1と言います。)

ここまでは、ポスティングバイトにおける、普通の経験、苦情・クレームあるあるです。が、こういった経験にちょっとした“妄想”が加わることで、マンガのネタとして立ち上がるのです。

“妄想力”が経験をマンガに昇華する

f:id:iharadaisuke:20160225142316p:plain(ちなみにほんとにこんなバンに乗って、毎日違うエリアへ行ってました。このバンを基地に、ポスティングバイトは散らばって行き、リュックのチラシがなくなるとクルマに乗せている在庫から補充するのです。)

f:id:iharadaisuke:20160209124331p:plain
もし、そうして配布されているチラシが、なにがしかの災厄から家々を守る“護符”だったら……?
配られる側からしたら迷惑だなーと思っているあのチラシの束は、そんな護符をカモフラージュするためのものだとしたら……?

f:id:iharadaisuke:20160225142809p:plainチラシなんていらない、とクレームし「配禁物件」に指定されることで、そんな“護符”が届かず、家に災厄が降りかかってしまったら……?

……そんな私の妄想が、ゆかいなまんがになりました。めでたしめでたし。

ポスティングの経験が、私の妄想と混ざることで、ありえないシチュエーション・ジャンルのマンガになる。これは、私がポスティングのバイトをしなければきっと思いつかなかったであろうネタ。

だからマンガ家志望者は、家にこもって絵の修行ばかりしないで、たまにはまるで関係ないバイトでもすれば良いんじゃないか。そんな話です。

マンガ図書館Z | ものミコ 読んでみてください!【閲覧無料】

“妄想力”がストーリーを生む、それはマンガに限ったことではない

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余談ですが、最近DVDで映画『キングスマン』を観ました。
このDVDの特典メイキング映像で、マシュー・ヴォーン監督は「テーラーでスーツを仕立てた。採寸に時間がかかり退屈で、鏡に触れたらどうなるか、床が下がって秘密基地に……」という妄想がシーン作りの着想だったことを述べていました。
これも、“経験”と“妄想力”が物語を生んだ(深めた)瞬間です。

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ま、妄想がマンガを生むなんて当たり前、ですよねw

まあ、マンガを少しでも齧ってる、描いてる人なら“妄想”がマンガの源であることは、私がこんなに例を出すまでもなく身体に染みた常識だと思います。

が、ここで私が言いたいのは、その“妄想”の幅を広げるために、まるで関係ない・今まで経験したことのないものに挑戦してみるというのも、ネタを増やすための大事なことなんじゃない? ということです。

★宣伝タイム★

というわけで、私の経験と妄想から生まれたゆかいな妖怪ハーレムドタバタコメディ『ものミコ』、ゆみまるさんがかわいい絵で仕上げてくれています。マンガ図書館ZでWEBから、PCやスマホで無料で読めます。全1巻、ぜひサクッと読んでみてください。

>>マンガ図書館Zで『ものミコ』を読んでみる!

オーバーペイントRe:PAINT

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こちらはコミックス未収録の読切に、描き下ろしマンガ31ページを加えたKindle版の電子書籍コミックスです。同様に、「街にあふれるラクガキ“グラフィティ”が実は怪異を封じる護符の役目だったら――」という『ものミコ』との共通のコンセプトがあります。
250円と代金がかかりますが、『ものミコ』との相違点を発見する読み比べも楽しいかもしれませんよ?w

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*1:こうした専門用語を知るのも、その業界に飛び込んだ経験で得た情報、ということになる。